悲しい身の上


2 悲しい身の上

 「あー、今日もまた結果を出せませんでした!」などと、野球中継のアナウンサーが叫び始めたのは何時の頃からだっただろう?
「結果は出ているんじゃないのか、妙なことを言うナ?」と思ったものだ。

 この「結果が出ない」。
 しばらくすると、テレビのスポーツ番組で当たり前に使われるようになり、あの厳しい国営放送のアナウンサーまでが洩らすようになった。どうやら打者の場合はヒットがでない、投手の場合は勝ち星がつかない、いわゆる良い結果が出ないと言っているらしい。

 そんな言い方あったか?もしや、知らないうちに気象単位のミリバールが消えてヘクトパスカルになっていたように、「結果」が果実が実を結ぶと言う意味の結果になり、結実するという良好な場合に使う事になったのかと、、、、。そんな訳はない。その場合は「結果する」だろう。最近は相撲の中継でも聞くようになった。さては、これスポーツ用語なのか?

 うーん、分らん。野球の世界は時々変な日本語を話す方もいるし、まあいいか、と言うことで納得しないでもない。

 解説をしていた元選手の言う「みのうえ」も最初冗談かと思った。「このバッターは長打よりもコンパクトなスイングがみのうえですから」身上と言いたいらしかった。(新庄ではない、念の為)誰も注意しなかったらしく、何回も聞いた。まあ、勘違いと言うことで笑えるが、「結果が出ません」という言い方は、その言葉に隠された暗に非難するという響きもあって好きになれない。

linhos


 英語には日本語の「頑張れ」に相当する言葉はないということを聞いたことがある。敢えて言うならDo your best が近いらしい。
 この違いは大きい。
 教えてくれた人の結論は「
頑張れの果てに特攻隊がある」という過激なものだった。特攻隊はともかく、「頑張れ」と言う言葉には出来うることをやれという救いはなく、強迫めいた部分が見え隠れする。

 昔、マラソンの瀬古選手は途中棄権した国際試合の後「這ってでもゴールしろ」などと叩かれた。帰国後のインタビュー、瀬古さんは「這ってでもゴールしろと言われても、そんなことは出来ないんですから」と青ざめた顔で語った。
 その時の瀬古さんの悲しい目は忘れられない。
 この究極の「頑張れ」を聞いて、スポーツ選手は本当に気の毒だと思った。応援しているように見えて、その実 当事者を追い詰める何となく陰険な「頑張れ」。当事者をやんわり締めつけるという意味で、「結果が出ません」に似ているような気がする。

 さて、その「結果が出ません、出せません」。姑息な言い回しとも言えるこのセリフ。言うほうは楽なのかもしれない誰も「あ~あ、この人今日も打てない。何やってんだ」なんて事は言っていない。
 あくまでも、ケッカが出ないのだ。
  
 誰も頑張れとは言っていない。 
 ケッカに頑張って欲しいのだ



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