1 Sir Simon Rattle

2006年 6月17日 

Leaving Home

(全7枚)

「Orchestra Music in the 20th Century」Vol.1-7




A Conducted Tour by Sir Simon Rattle
City Of Bermingham Symphony Orchestra

1 Dancing on a Volcano
2 Rhythm
3 Colour
4 Three Journeys Through Dark Landscapes
5 The American Way
6 After The Wake
7 Threads

 このDVDに収められているのは以前テレビで放映されたもので、指揮者サイモン・ラトルにより印象派以降、20世紀の音楽の変遷がオーケストラ作品から解き明かされていく。この解説が分かりやすく面白い。大したものなのだ。

 僕の演奏活動との関係は何もないが、10代の中頃に出会った武満徹、ペンデレッキ、シュトックハウゼン、ジョリベ等々に衝撃を受け、それは未だに続いている趣味の領域。ジャズ・ピアニストのビル・エヴァンスがベルク、ウェーベルンなどを好きだった話もある。巨匠と一緒にしてはいけないのだけど、この世で起こっている新しい試みはいつだって興味深い。

 最初に手にしたのは1のディスクだった。
 ワーグナーから始まってシェーンベルク、ウェーベルン、ベルク等々、時代の必然として移り変わる様々な手法が解き明かされる。
 「Leaving Home」(故郷を離れて)とは歴史的な基準とか因習から離れて新しい旅に出ると言うような慣用句として使われるとの事。
 それは2のディスク、リズムの解体の項の説明が分かりやすい。

(ラトルの説明では「以下引用」
「社会的、政治的また芸術的にも、あらゆる古い確信が粉々に砕かれた時代にとって最も頻繁に使われる隠喩なのです。
 音楽では硬直し始めた構成や形式を離れ、慣れ親しんだ情景や和音も捨てました。調性の体系リズムの確固とした基本、あらゆることが信頼出来なくなりました。)

 以前、武満徹さんと谷川 俊太郎さんの対談で、谷川さんが面白い事を言った。
 「モーツァルトの時代はまだ世の中は狭くてネ、小さな共同体の中での文化なんだけどサ、ブラームスになるとネ、山の向こうにも違う国があってサ、この世がかなり広い事を人は知っていくわけヨ。で、君の場合はサ、もう地球規模を離れて宇宙に飛び立っていくイメージなんだよ。」
 武満さんはそれに答えて「いやー。今回モーツァルト、ブラームスと並んで自分のを聴くとサ、なんかネ、自分のはしょうがないななんて思っちゃてサ、」
 (ファンダズマ・カントス初演の放送で)
 谷川さんの言葉が音楽の変遷の意味を説明しているように思えた。

 エドガー・ヴァレーズはフランスからニューヨークに移り住み摩天楼の神秘に取り憑かれ、「これはスピード、統合、躍動の時代だ。これらの特徴を反映する新しいフォームが待ち望まれている。人々に私は音楽家ではなく、リズムや振動数、密度を使って仕事をしている者だと説明する。音楽の旋律などたわ言に過ぎない。」と言った。で、パーカッションとサイレンだけで1931年「Ionisation(イオニザシオン)」を発表してクラシック界に衝撃を与えた。


 

The Complete Works

2CD Set

Riccard Chailly (cond)
Royal Concertgebouw Orchestra
Asko Ensemble
DECCA 460 208-2

 ヴァレーズの作品はそれほど多くはない。元々数学と工学を学んで後に作曲家に転じた人で、ロックミュージシャン、フランク・ザッパはかなりこの作曲家に傾倒していたらしい。

 この全集を一つ一つ説明するのは無理なのだが、僕はこれによって何人かの新しい作曲家を知った。中でもソフィア・グバイドリーナは衝撃的だった。ラトルの選曲は秀逸で、その作曲家の最も素晴らしいところを聞かせてくれているように思う。
 グバイドリーナのものは一つの楽章だけが演奏されていて、その厳しさは胸を打つ。全部聴きたくなって探したが未発売。で、発売されている別曲のCDを1枚入手した。


Symphony in Twelve movements Stimmen,,,,Verstummen (1986)

Stufen (1992)

Gennady Rozhdestvensky (cond)
Royal Stockholm Orchestra

Chandos Records / Chan 9183

 アメリカの作曲家、チャールス・アイブスの項も興味深い。
 ラトルは時折詩的な表現で音楽を説明する。
 アイブスの場合は
「彼の音楽はしばしば意識的にぼやけている。視野の片隅にとらえた何かが、あらためて振り返ってみると消えてしまう影のように。」

ラトルはパーカッショニストとしてキャリアを始め、指揮者に転じた。地方オケに過ぎなかったバーミング市交響楽団を世界的なオーケストラに育て上げた事は高い評価を受けている。実際このディスクでのオーケストラの演奏は上質なのだ。

 全く個人的な趣味の領域なのだが、16歳頃から40年間、折りに触れ聴いていた音楽の集大成を見せられているような気がする。

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