3匹の猫と組長



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 どういうわけか、猫は狭いところに入りたがるのです。
 小皿の入っていた箱を捨てようとして置くと、早速みかんが飛んできてこの有り様。頭隠してと言うか、殆どお尻はみ出し状態。
 どうも本人は入っているつもりなのです。








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 これをみかんより少し賢いと思い込んでいるパスタが見逃すはずもなく、上から覗き込んで軽く一瞥をくれ、「あんたって進歩がないのよネ。バカじゃない?」と言わんばかり。見上げるみかんは謂われなき謗りを受け少し不安になるのでした。





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 さて、一方こちらの偉そうにふんぞりかえったミミズクのような猫は御存知チビ。「ウム、何だな、いわゆるすっかり馴れちまったあたしは、以前のようにコソコソする必要は全くなくなってしまったわけナ、早い話。ここのパスタの姉御はすぐ怒りやがるから苦手だけどナ、何たってみかんとは実の兄妹ナわけで、そこんところをここのオヤジは知ってるからな。無下には出来ぬ弱みって言うか、ま、猫社会的責任ってヤツを感じているんだナ、、、、都合のいいことに、、、、。
 ご飯がたらふく食えるのは案配いいネ、ウム。」

「おい、チビ。何をエバってんだよ」「ン?、、!、、ナアーゴ、、」チビの声はハスキーなのです。

 この3匹の食事関係、トイレの始末(チビを除く)、ブラッシング、散歩の手配(窓を開けるだけ)、外出からお帰りになった際の足ふき(なんかネ、昔の渡世人が宿入りして先ず草鞋を脱ぎ足を洗う感じ?)等々に忙殺されつつ一日があっという間に過ぎるのです。

 元々は関係のなかったチビ。ある日、外からスーッと入ってくる猫の気配。どっちかが帰ってきたかと思えば、視界の端を横切ったのはパスタともみかんとも違う柄。「えっ」。目で追うとそこには体を低くしてサササっとドライフードの入った皿方面へ急ぐチビの姿が。「カリカリカリカリ、、、。」
 ラックの上にパスタ、下にみかん、皿は二つに分けられて、一応それぞれ専用になってはいるのですが、チビはみかん用のものは自分も良しと勝手に決めたらしい。

 初めは恐る恐る近付いて、ベランダで食事をするだけの約束(ンなものはない)が、いつの間にか上がり込んでパートタイムの家族のような態度。椅子の上で寝ていたりするのです。野良だと思っていましたが、体の汚れ具合などを見ると、どうもそうではないようです。どこかの家に御厄介になっているような気がします。と言っても、籍だけはそこに置いて食事関係はこちらということでしょうか?

    

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 上がり込むようになった頃のショット。まだ子猫だったころのヤツ(写真右)と同一猫かどうかは不明。


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. 兄妹と認識しているのか、みかんとはこのように組んず解れつで遊びます。「ぎゃ、きょえー」とか声を出すのは大体チビの方。 嫌がるチビに関係なくみかんは盛り上がり、堪りかねたチビが外に逃げるまで続くのです。(ほとんどの写真がブレていて、この様子を伝えることは困難)

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 相変わらず怒ることもなく気のいい猫、みかん。外に出ることが生き甲斐のみかんのために、毎朝(毎昼か?)先ず窓を開ける事から一日は始まるのです。 雨でも構わず飛び出しては帰ってきていたのが、最近は雨の音と匂いを認識してきたのか無茶はしなくなりました。困るのは雨上がり。様子が違うことに気付いてご帰還になるのだけど、足は泥だらけ。ウェットティッシュでは無理なので、洗うことになるのです。ま、引っ掻いたり噛んだりはしないから大丈夫なのですが、この時はバカ力。大変なのです。

 しかし、パスタに比べれば楽なものです。パスタは足を拭くだけでも大騒ぎ。みかんが怯えてこちらを心配そうな表情で窺うほど恐ろしくヒステリックにわめくのです。まずパスタを洗うことは現時点では不可能かと思われます。





 思わず笑ったショット。

 この容器がお気に入りで、いつもは身を沈めているはずが、この日はどういうわけかさらし首状態。
 ま、気分はいいんでしょうなァ。

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 昨年の秋から始まった外出。猫は寒さに関係なく出たがり、開けた窓から入る冷気に震えることも多く、この冬は外に出したことを後悔する事しきり。
 明るいうちはまだしも、深夜はご帰還の様子も見えず、小一時間窓を開けっぱなし状態なんてのもざらで、本当に寒い冬でありました。お二方とも無事ご帰還の後、窓を閉めると部屋の中がフワーッと暖くなり、ホッとしたものです。変な話ではあります。

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 また春は巡り、猫にも過ごしやすく、開け放した窓からは心地よい風が部屋に流れ込むようになりました。たぶん、猫達は人間よりもずっと敏感に春の匂いに気付いているように思えます。


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 この冬、チビは勿論のこと、毎日のように誰かがベランダに現れ、代る代る食事をして帰っていきました。似たような猫もいて、一時はどれがどれだか見分けが付かないほどでした。
 暖くなると訪問はめっきり減りましたから、真冬はエサ場も厳しい状況だったのかも知れません。新猫もいて、その中の一匹がこの大きな白い猫です。中々の貫録で、便宜上「組長」と呼んでいました。かなりの老猫です。




 ゆっくりとした動きには威圧感もあり、「あ、そうですか。お待ち下さい」と食べ物を差し出すのが正しく思われました。
 家の2名が外に出たりしている手前、もしこの辺を仕切っているお方だとしたら、ご挨拶代わりに一応渡世の筋を通しておいたほうが無難ではないかと、その昔、仁侠映画をたらふく見過ぎたバンドマンは考えたのです。(噂を聞いて駆けつけただけかも、と言う事も充分考えられる)




 組長を見て、本当の野良がいかに過酷かということを知りました。顔中傷だらけ。爛れたようにも見える目の周り。生きていくために戦い続けた日々が体中に刻まれているのです。歴戦の勇士は決して声を出さず、ただ黙ってこちらを見つめるのです。
 ひどい言い方をすれば、可愛いという猫ではありません。この丸々とした体から察するにあちらこちらでエサを確保する戦いには勝ち抜いてきたものと思われます。まず、敬意を表して食べていただきました。組長も最初からカメラに収まるものでもなく、当初は窓越しに触れ合うというものでした。姿を見て、食事の用意をし、簀子の上に置いて食べるのを待ちました。

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 ここに来ればごはんがあるという情報は伝わっていたと思われますが、遠慮がちに現れました。少し慣れると暗くなってからも来ました。どの猫も腹を空かせてくるわけですから、無下にはできません。

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 組長で感心したこともありました。ドライフードを入れた皿はほかの猫が食い散らかして、簀子の上に散乱していたことがあったのですが、組長がいなくなって皿を見ると、皿の中には口を付けず皿からこぼれたものだけをキチンと食べてお帰りになっていたのです。なんだか筋を通すというか、義理堅い猫でもありました。

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  最後に現れたのは2008年の5月。体はボロボロで食事もあまり進まない様子でしたが少しだけ食べました。いま考えると、あれは最期のお別れの挨拶だったのではないだろうかと思えます。

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 目やにも取ってあげたかったし、顔をお湯で濡らしたタオルで拭いてあげたかったのですが、残念なことにそれは叶いませんでした。組長もまた我が家に度々訪れた多くの猫の一匹でしたが、野良ではなく家で飼えば甘えた声も出したろうにと気の毒に思ったものです。


 ある日の深夜1時過ぎ、パスタが大騒ぎするので外を見ると何かがいるようでした。庭の明かりが消えていてよく見えないので、強引にフラッシュ撮影を試みたのが下の写真。

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 似た猫がもう1名いるため、どれがどれだか分らなくなっていましたが、モンクのようです。目が感光してしまい恐ろしいことになっていますが、普通の猫です。それが証拠に体の前でチョコンと揃えた前脚というか、手。
 私は、この手の様子が好きなのです。どんなに強面のヤツでも、手だけはこのように「気を付け」状態になるのが微笑ましいのです。間違っても、体斜め右肩落とし右手ゆさゆさアンちゃん状態にはなれず、まあいわゆるヨタった様子を作れないのです。相手を威嚇するときは背を丸め高く見せ尻尾膨らませ、いかに自分を大きく見せるかということに苦心するのですから、人間のヨタった感じはなんの役にも立ちません。しかし、ヨタった系人間は、なぜあのように全身ユルユルのねじ一本外れてます状態をしてしまうんでしょう?
 それを見た人が「あっ、怖い」と思ってしまうのも何故でしょう?

 口元にも油断が見られます。

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 ついには座り込み。

 パスタはこいつが大嫌いです。

 仔猫のころ、昼間現れたこの猫にパスタは思わず部屋を飛びだして近寄ってしまい、私が焦る間もなく追い掛け回されたこともありました。
 モンクが現れるとパスタは部屋の中から大声でわめき、体中が逆立つのです。ある日、散歩から帰ってきたパスタの口元が汚れていました。「さては何か変なものでも食ったのか」と抱き上げてよく見ると口の周りが血だらけ。
 皮膚の一部に欠損状の傷。パスタは必要以上に気が強く、相手が大猫だろうと何だろうと構わず噴きまくる世間知らずですから、誰かに引っ掛かれたようでした。
 モンクの仕業ではないかと睨んでいますが真相は分りません。ひっかき傷事件以来、パスタの不機嫌な状態は続き、ベランダに誰が来ても大声で怒り、唸っては噴く繰り返しで、日を追うごとにその度合いは深刻なものになってきました。
 みかんでさえ、よけて通るようにまでなっていました。とにかく何でも、ありとあらゆることが気にくわない、ああ、ここに椅子があるのも、とおチャンが前を歩くのも、目の前を横切る黄色いバカもシャクに障るといった風でした。

 それで、すっかり心配になった私がパスタを抱き上げて、「よしよし、落ち着けよナ」と撫でているときの事です。何を思ったのか、パスタは私の手を思いきり噛んだのです。振り払おうとした私の手はパスタを叩き飛ばしたようになってしまい、パスタは吹っ飛びました。深く傷ついたパスタは目に触れぬ場所に閉じこもりました。いつものようにすぐ出てくるだろうと思っていたのが甘い考えだと思い知らされました。ほぼ三日間何も食べませんでした。水だけは飲んでいたようですが、現れたときに頭を撫でただけでも怒りました。

 見えるところに現れた時に名前を呼んでも無視。遠いところを見るような目つきでこちらを見ようともしないのです。
この状態が続くとしたら、みかんを預けてベランダ菜館も閉店かな、と考えました。
 
何日か後、「ミョー」と甘えた声を出したときは本当に安心したものです。 全く猫バカの話ではあります。しかし、人と同じように、猫も傷つき、心を痛め、心が固まってしまう繊細さを持っているということを改めて知ったのです。



「こら、モンク、横目で見るなっつーの」






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